屋根の融雪で雪下ろしの負担を軽減しよう

屋根の融雪方法は主に5つ

電熱方式

屋根に設置した電熱線を温めて雪や氷を溶かすのが電熱方式。屋根の全面、あるいは雪が積もりやすい箇所だけにピンポイントで設置します。
雪が降り始めた時点で自動的に作動するものが多く、溶けムラも少ないので手間をかけずに効率よく雪を溶かせるのがメリット。中には、スマホやパソコンを使って外出先から電源のオン・オフができる便利なシステムもあります。
デメリットは、設置コストが高い点。運転にかかる電力消費が大きいため、ランニングコストも高くなる傾向にあります。

灯油ボイラー方式

灯油・ガスを燃料とするボイラーで加熱した不凍液(寒冷地でも凍らないように作られた液体)を、屋根の表面や下に設置したパイプを通じて循環させて雪を溶かすのが灯油ボイラー方式。屋根の景観を損ねずに溶けむらが少ない融雪が可能で、屋根表面のメンテナンスもしやすい点がメリットです。
電熱方式と比べるとエネルギーコストは抑えられますが、パイプの設置には時間とコストが嵩み、消耗もするのでランニングコストもかかりがち。屋根の下にパイプを設置する場合は結露が発生しやすくなるため、結露対策も必要です。
不凍液の価格が高騰した際はメンテナンス費用も上がってしまうこと、ボイラーの稼働音が大きいこともデメリットとしてあげられます。

散水式

ポンプで汲み上げた地下水を消雪パイプやホースを使って散水して融雪するのが散水式。装置の導入費用や維持費が比較的リーズナブルなため導入しやすく、環境にもやさしい点がメリットとしてあげられます。
装置によって異なりますが、1台のスプリンクラーで10~25mという広範囲をカバーできるのもポイント。住宅はもちろん会社や工場のような大規模施設もカバーでき、屋根に太陽光パネルを設置していても融雪が可能です。
一方、地下水やポンプの状況次第では赤サビによって車や建物が汚れるリスクがあり、井戸の掘削にコストがかかる点がデメリットといえるでしょう。

自然落下式

建築時に屋根材の選定や屋根に傾斜をつけて雪を落下させるのが自然落下式。電気や灯油といったエネルギーを使用しないためランニングコストがかからず、融雪設備にかかるコストを削減できます。
ただし、落ちた雪を堆積させるためのスペースや隣家や道路への落雪リスクがあるためフェンスを設けるといった対策が必要。対策を怠ると落雪の下敷きになる危険性があります。
また、導入するには建物の設計初期の段階でこの方法を採用する必要があるため、既存の建物に適用するのは困難です。

耐雪方式

屋根そのものの構造や材質を強化し、雪の重さに耐えられるように設計するのが耐雪方式。屋根の適切な勾配設計や雪の負担を分散させるための構造的工夫が施されており、一般的には屋根の中央部分がくぼんだM字型になっています。
特別な融雪システムを設置する必要がなく、ランニングコストがかからない点がメリットですが、建築時のコストが大きくなりやすく、極端な大雪の場合は耐雪構造であっても除雪作業が必要になるというデメリットがあります。

屋根に融雪設備を導入する前に知っておきたいこと

そもそも屋根に融雪設備は必要なの?

雪は降り積もることで大きな脅威になります。
新雪の場合「1立方メートルの雪の重さは50~150キロ。根雪で固まると約500キロ」といわれているため、屋根から落下して人に直撃すれば命を左右する大事故につながります。
そのため、雪下ろし作業は雪国において避けられない作業なのです。

しかし、雪下ろしは高所で作業が行われるため、年齢を重ねると落下のリスクが高くなってしまいます。
例え若くても作業中の転落やケガのリスクはゼロではないため、雪下ろしをする際は安全対策が必須です。
また、危険だからといって積雪をそのままにしておくと屋根や建物に負担がかかり、構造的なダメージや水漏れの原因となります。
落雪による隣人トラブルが発生する可能性もあるため、人力による雪下ろしをやめて融雪設備を導入するメリットは大きいといえるでしょう。

屋根に融雪設備を設置するメリット

雪下しが不要になる

融雪設備を設置する最大のメリットは、雪下し作業が不要になる点。雪下ろしにかかる時間と手間を省くだけでなく、高所での危険な作業による事故のリスクを大きく減少できます。
特に高齢者や体力に自信のない方にとって重い雪を下ろす作業は身体への負担が大きく、心筋梗塞のような突発的なトラブルの発症リスクも高まってしまうもの。融雪設備を導入すればこうした不安を払しょくし、安全かつ快適に冬を過ごせるようになります。

積雪による屋根・建物全体への負荷が軽減できる

屋根に雪が積もるとその重みにより屋根や建物全体に大きな負担がかかり、屋根材の破損や建物構造の劣化を引き起こす可能性があります。
融雪設備を導入すれば、積雪を効率的に溶かして建物にかかる負荷を軽減することが可能。導入維持にコストはかかりますが、建物の寿命を延ばせるだけでなく長期的な保守費用の削減も期待できます。

外観のデザインを維持した状態で設置できる

屋根の内部に設置する融雪設備なら、屋根の外観を損なうことなく設置が可能です。
多種多様なデザイン・カラーが用意されている設備もあるため、屋根に設置する場合も色や質感がマッチしたものを選ぶことが可能。住まいのデザイン性や景観を重視している方も、こだわりを活かしたまま雪下ろし問題を解消できます。

屋根の特定の場所だけの対策も可能

融雪設備には、屋根全体ではなく特定の部分にのみ設置できる設備も。費用を抑えたい場合は、軒先にだけ設置して氷柱や落雪を防止することができます。

屋根に融雪設備を設置するデメリット

ランニングコストがかかる

融雪設備を導入するうえでもっとも考慮したいのが、ランニングコストが発生する点です。
ほとんどの設備は灯油・ガス・電気といったエネルギーコストが発生します。原油価格が高騰した際は、灯油・ガスを使用したボイラーだけでなく電気代にも影響が出るでしょう。
ランニングコストは燃料費だけではなく、融雪設備そのものの定期的なメンテナンスや故障した際の修理代なども発生します。
融雪システムを導入する際には設置時にかかる費用だけでなく、維持するための費用も想定しておきましょう。

融雪設備の導入が向いていないことがある

融雪設備は特に積雪量が多い地域で効果を発揮するため、積雪量が少ない地域ではあまり効果を感じられないかもしれません。
せっかく設備を導入してもあまり雪が降らず、導入コストを回収できない可能性があるのです。
「冬期は毎日雪かきが必要になる」という地域なら導入をおすすめしますが、「大雪が降るのは数年に一度」といったレベルの地域であれば、融雪設備にコストをかける必要性はないといえるでしょう。
積雪量によっては、落雪を防ぐ雪止めの設置で事足りるケースもあります。
融雪設備の導入を検討する際は、住んでいる地域の気候や積雪量などから総合的に判断するようにしましょう。

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