【自由設計の現場から 】2:”心地よさ”の正体
施工事例でご紹介したお住まいを担当した設計やインテリアコーディネーター(以下:IC)に、家づくりの現場の様子を伺い、これから注文住宅を建てる方へのヒントを探るシリーズ。
取材の現場で感じた素朴な疑問を、設計とICに解説してもらいます!
今回の疑問は
”心地よさ”の正体です。
家づくりの現場を探る舞台となるのは、美しいアイランドキッチンが特徴的な札幌市Y様邸(設計:藤本/IC:平向)。
家づくりにおいて、何をおいてもアイランドキッチンを最優先にした、というY様。旦那様によると「アイランドキッチンができなかったら、一軒家を建てなくてもいいんじゃないか」と思うほど、家づくりの優先順位の不動の1位がアイランドキッチンだったのだそう。
*先に施工事例を読んでおきたい!という方はこちら(click!!)からどうぞ
そんなY様のお住まいに取材でおじゃました時。実は、なんとも言えない気持ちになったのです…
ありのまま書くと
あぁ、心地よいなぁ
なんか、いい
なんかすごく気持ちいい
「なんか」って何なのか。
「なんかいい」とは何を指しているのか?
語彙力が足りないのが悔しい。
感じたことを上手く言葉にできないのが
もどかしい!
しかしながら
今はこの心地よさに身を委ねて取材をしよう!そんな風に感じたのです。
そこで、私たち取材スタッフが感じた、あの、なんとも言えない
“心地よさ”
とは何なのか、その答えを設計とICに聞いてみました。
家づくりの現場で、どのようなやりとりがあって、あの“心地よさ”が生まれたのか?その答えには、私たちがかかげる『one team』の家づくりの真髄がありました。
取材スタッフ:リビングに入った時に感じたのは、潔さを感じるほどの白と、明るさ。あとはアイランドキッチンの美しさでした。あと、シンプルだな、という印象です。
シンプルなんだけど…素っ気ないワケではない…うまく言えないんですが…“美しい”という感じでしょうか。
藤本:“美しい”という言葉、あとは“潔さ“というのは、Y様の家づくりにピタリと当てはまる気がします。
今回のお題は『”心地よさ“の正体』ということですが、お住まいの色合いやインテリアのスタイルの話にすると、読む方の好みによってはピンとこない話になってしまうので、僕からはあえて細部の話を、しようと思います。
例えば、取材でも触れていただいたリビングの入り口の引戸。赤い線で示したところですね。
打ち合わせが始まってすぐの初期の段階から、リビングの入口は「ドア」ではなく「引戸」が良い、というご希望でした。「引戸」にするには「戸を引き込む壁」が必要になるので(さて、どうしようかな)と思っていたら奥様がシューズボックスの扉を兼ねられませんか?と。
これには私も驚きました。その手があったか〜!という感じです。
この作りだとスペースに無駄が無いです。建具も減るのでコストダウンにもなります。
いいアイディアだなぁと。思わず唸ってしまいました(笑)。
そうと決まれば、そこから先は私の仕事。
アイディアのバトンを受け取ったら、次はそれを実現するための計算というワケです。
具体的には、収納側の壁の位置など、かなり詳細に寸法を検討して微調整を繰り返しました。引戸が開いている状態でも、閉まっている状態でも、変な隙間が出来ないようにしたんです。この辺りの詳細な検討は本当に良い経験が出来ました。
「美は細部に宿る」という言葉がありますが、Y様のお住まいの何ヵ所にも、このようなポイントがあるんです。それが空間の美しさの源になっているのは間違いありません。
次はリビングについても、ちょっとだけ種明かしというか、家づくりの現場を振り返ってみます。
Y様にとってアイランドキッチンの優先順位は不動のTOPでした。
ただ、アイランドキッチンを導入するには、通常のキッチンよりも広いスペースが必要になるんです。
Y様は1階にもう1部屋欲しい、という希望が当初はあったのですが、敷地の広さには限りがあります。
もう1部屋作ると
アイランドキッチンにはできない
アイランドキッチンにすると
もう1部屋は作れない
どうしようか悩まれていた時もありましたが、最終的にY様はアイランドキッチンを優先し、もう1部屋は無しにしました。その辺りの決断はまさしく潔いものでした。
おかげでご覧のような、ゆとりのあるキッチンスペースを生み出すことが出来たんです。ここに至るY様の決断も、“心地よさ”の正体の1つだと思います。
平向:収納の多さも“心地よさ”に貢献していると思いますよ!
キッチンは特にそうですね。食品庫があるので、買い置き品もすっきりしまえますし、食器棚にはダウンキャビネットを採用したので、高いところまですみずみ収納できるようになっています。
こういう、パッと見ではわからない部分の工夫こそが日々の暮らしの便利さになりますし、それこそが“心地よい暮らし”にもつながっていると思います。
ちなみに、ダウンキャビネットは豊栄建設の標準仕様で採用しているメーカーであれば取り付けることができるので、ぜひ多くの方に検討いただきたいです(幅や吊戸の高さによって金額は異なりますが、一番安い手動タイプの商品で3〜5万円程度)。
食器棚の上の方って、一度しまい込むと取り出すのも大変になりがちです。なかなかフル活用できないところなので、ダウンキャビネットはおすすめです。
藤本:収納といえば、Y様邸の階段下も日々の暮らしの便利さにつながる要素ですよ!
リビングは家族のモノが集まりがちで雑多になりやすいスペース。洗面台もお子様が成長していくにつれストックする物が多種多様になっていく…つまり、「使う場所」に合わせて「しまう場所」を確保しておかないと、すっきり片付いた家にできない。それって、取材チームが感じた“心地よさ”からは離れていってしまいますよね?
今回のような「廻り階段」は色々なスペースからアクセス可能な収納を作れるので、細かく区切ると、ご覧のように使いやすくなります。収納したいモノによっては、アクセスは一つにして大きな収納に!というケースもあります。
私たちが提供するのは自由設計の家なので、どこに何をしまいたいか?そのご希望に合わせて設計します。最近では階段下を収納以外の用途にされる方も増えていますよ。「ペットスペース」「お掃除ロボット基地」「ちょっとした書斎スペース」なんて使い方も人気です。
今回の【自由設計の現場から】は、言葉にしづらい“なんだかいい感じ”や“心地良い”といった、感覚的な気持ちよさの正体を探る取材でした。
設計の藤本とICの平向が語ってくれたのは、『その心地よさは、なんとなく出来上がるものではなく、アイディアと計算で作っている』ということ。
そしてそれは、施主様と設計、IC、ここには登場しませんが営業も加わったone teamだからこそ実現できるものなんだと、最後に二人が語ってくれました。
家づくりをお考えの方へのメッセージです。
藤本:Y様の土地は、全体的に高低差がありました。なので、高低差が少ない方に駐車スペースを取るプランで進めていたのですが(基本はこの形にする事が多いです)、打ち合わせの中で、1階や2階ホールの日当たりを大切にしたいという思いを感じたので、思い切って反転をご提案しました。
反転するにあたっては、高低差のイメージやコストの違いなど、細かな打合せが必要になります。
Y様にとっては敷地の高低差なんて、ちょっと理解しづらい部分も多かったと思うのですが、お二人とも、きっとすごく勉強して下さったんだと思うんです。我々の提案の意図をしっかり理解してくださり、今の配置になりました。
より理想に近い家になるように、我々はもちろんY様もがんばって下さった。
それが満足いただける家にできた最大の要因だったと思います。
建てたい家のイメージと、建てたあと「こう暮らしたい」というイメージを施主様はお持ちです。
対する我々は、それを叶えるための知識とノウハウを持っています。
豊栄建設の住宅パンフレットには「one teamでサポートします」と書いていますけれども、本当の意味は「施主様も含めてのone team」。私たちと一緒に家づくりをしましょう。一緒に知恵を絞ってアイディアを出しあって、理想の住まいを手に入れましょう!
平向:Y様のお家は、内装(建具や床)がかなりシンプルな色味でまとまっています。買い替える家具や家電をある程度想定した上で、ご夫婦で内装を決めて行かれた印象です。*この辺りのお話は施工事例でもY様がお話しくださっているので記事をお読みいただきたいです。
家づくりの現場では、そのような「好み」の部分が私たちICの中に蓄積されていくので、例えばクロス選びなどで迷われている時などのご提案に生かされていきます。
例えばこちらのピンクの幾何学模様のクロス。1階のシンプルなインテリアとは、ちょっと異なるテイストですよね?
実はこのクロス、当初は2階のフリースペースで検討していたものでした。
が、1階のシンプルな雰囲気を2階のホールにも引き継ぎたいというお考えになって採用には至らなかったんです。
でも、お住まいのどこかにこのクロスを使いたい、という思いがY様にあったように感じたので、私は2階のトイレのアクセントクロスにすることをご提案しました。
とは言え、「あのクロス使いませんか?」だけだと提案になりません。私の中に蓄積されていたY様のお好みを元に、グレーの壁、床と天井の色を選んでご提案をし、採用いただけた時、とても嬉しかったのを覚えています。
私たちの家づくりは自由設計です。自由って幅が広くて、選択肢もいっぱいで、クロス1枚にも悩むことばかりの一面もあります。だからこそ、私のようなインテリアコーディネーターと藤本のような設計も入って、一緒に家づくりをします。
役割はそれぞれ違うけれど、目標は1つ。
満足いただける家を建てること。
Y様の施工事例の中には、お二人がこだわられたこと、ご夫婦のお住まいに寄せる思いなどが紹介されていますので、ぜひこの心地良いお住まいを隅々までご覧になってみてください。
ところで… Y様邸の設計を担当した藤本は、他のブログにも登場しています。それは【妄想建築】と言う、人が住まいに寄せる妄想を形にする企画。緻密な計算から妄想までw 第一線で活躍する設計の仕事をこちらでお読みいただけます。