【自由設計の現場から 】1:採光と中庭
施工事例でご紹介したお住まいを担当した設計やインテリアコーディネーターに、家づくりの現場の様子を伺い、これから注文住宅を建てる方へのヒントを探るシリーズ。
取材の現場で感じた素朴な疑問を、設計に解説してもらいます!
今回の疑問は
採光と中庭
です。
■採光について疑問を深掘りするのは、幅約7m x奥行き約24mという細長い土地に念願の新築一戸建てを建てた札幌市S様邸(設計:橘井)。
■中庭について深掘りするのは、台形と三角形が組み合わさったような変形地に中庭のある注文住宅を建てた札幌市豊平区のT様邸(設計:兼平)。
まずは、札幌市のS様のお住まい。
家づくりの現場への疑問は
『2階の採光』です。
施工例取材の際「たくさんの自然光が入る明るい家にして欲しいと伝えました。吹き抜けの窓と掃き出し窓を大きくすることで、それが叶いました」と、お話しくださったS様。
ご覧のように明るいお家になりました。
極力いろいろなところから自然光が入るように、窓は増やせるだけ増やした、とも話してくださったS様。
取材班は自然光ならではのフレッシュな光に感動しながらお住まいの撮影をさせていただいたのですが…
一つ、
疑問が。
それは2階の採光です。
なぜ、2階の南東側に窓を作らなかったのでしょう…
取材時は、寝室からと廊下からの2WAYになっているウォークインクローゼットにテンションMAXになりすぎて、この点を見落としてしまっていました。
そこで、この疑問を設計担当の橘井にぶつけてみました。家づくりの現場でどのようなやりとりがあり、現在の間取りになったのか?
その答えには
“家づくりの基本”が、ありました。
橘井:初回の提案時、2つの案を用意していました。そのうちの1つに、2階の南東側に陽が入るプランもあったんですよ。
あくまで初回の提案でしたので、提案の幅、と言うのかな…ご要望を入れ込みつつも、方向性の異なるものをご用意して、お住まいへの希望を整理してもらう、という目的がありました。
S様の希望である<大きな吹き抜け><自然光が入る明るい家>と考えると、南東側に窓のあるプランの方が本来のご希望を叶えられていますよね?
でも、このプランには1つ懸念点がありました。
それは、S様の隣の区画も同じような配置で設計されることが想定できたんです。つまり、南東側に置く窓はそのまま、すぐ隣のお家に向いてしまう。
なので、作成した2つの図面には
①窓の向こうはすぐお隣さん!になってもいいから、大きな吹き抜けと2階の採光を重視するか。
②2階の採光の優先順位は下げて、お住まい全体のバランスを取るか。
方向性として、どちらにしますか?という提案の意味がありました。
打ち合わせの結果、S様が選ばれたのは②。
リビング階段にして吹き抜けと階段を一体化した方が良い、と決められたんです。
採光は確かに求めたいけれど、それは家族が多くの時間を過ごす1階に集中しよう、という選択です。2階南東側に窓がなく、吹き抜けの面積が小さい方のプランを選択しても、十分な採光が取れる、というのもポイントだったと思います。
家づくりの基本は“優先順位” です。何を優先したいか、ご希望の順番を明確にしておくと家づくりはとてもスムーズです。S様はこの点がとてもクリアな方でした。
お住まいの写真や広いお風呂、リビングの天井のお話など、さまざまなエピソードは多くの方の参考になると思いますので、ぜひ施工事例をご一読ください。
続いては、札幌市豊平区のT様のお住まい。
家づくりの現場への疑問は
『中庭の位置』です。
施工例取材の際「わが家には小型犬がいるので、ここで遊ばせたい。ベランピングやおうちキャンプもしたい」と、お話しくださったT様。
ご覧のようなテラスのあるナチュラルモダンなお住まいになりました。
「狭いかな、と不安だった変形地で、中庭もリビングも十分な広さを確保できて、満足のいく家が完成しました」と笑顔で話してくださるT様を拝見しながら思ったのは…
この中庭の配置…
最高すぎる!!!
という点でした。
そこで、設計担当の兼平に聞いてみました。兼平はどのような考えで中庭をここに配置したのか?家づくりの現場でどのようなやりとりがあったのか?
その答えにも“優先順位”という言葉が
登場します!
兼平:初めてT様の土地の図面を見たときに感じたのは、限られたことしか実現できないかもしれない、という思いでした。なので、お住まいに対する夢や希望の優先順位を確認しながら、一つ一つご要望を落とし込んでいくことにしました。
私が初めてT様にお会いしたのは3回目のプラン提案時です。
それまでは営業を通して図面の修正やご要望の落とし込みをしていました。いよいよ具体的に間取りの検討に入るということで、私も同席し、図面に対する修正点やご要望の聞き取りをしたんです。
優先順位をしっかり確認しながら、盛り込むことが難しそうなご要望についてはその場で代替え案をご提案する、といった感じで、中身の濃い打ち合わせをした記憶があります。
そのときの(3回目)間取りがこちらです。
ご覧の通り、この時、中庭はありませんでした。
私が初めて同席した、この3回目の打ち合わせの場で、T様から“中庭が欲しい”というご希望が出たんです。
ちなみに、このような変更は別に珍しいことではありません。
お住まいの夢や希望の優先順位は固定していなきゃいけない、というルールは無いんです。後から思い立って、一気に優先順位のトップになるものがあって、いいんです。
私たちが設計しているのは自由設計の家です。“自由”という言葉は、施主様のための言葉、設計にあたってのポリシー、私たちの理念でもあります。施主様の“自由”を形にできるまで何度でも直します。
ちなみにこの時、中庭に続く動線についてもご希望が出たので、T様は中庭のある暮らしのイメージができていた、そして優先順位も高かった。
改めて頭の中をリセットし、作成し直した4回目の間取りがこちらです。
中庭の配置はもう、ここしかない、という判断でしたね。というのも…
①西側はリビングにしたい。東は土地の幅がないので中庭というより、一般的なテラスになってしまうのでご希望とは違ってしまう。
②北側は青空駐車場があるので適さない。
③残るは南側。ここに中庭を置き、光を建物の中まで取り込める仕掛けを作るのがBEST!
と、考えたんです。
今回の【自由設計の現場から】は、いずれも変形地が舞台でした。
そこで最後に、設計の二人から、変形地での家づくりを考えている方・お悩みの方へのメッセージです。
橘井:最低限の間口があれば、充分ご満足いただけるお住まいの提案が出来ると思います。注文住宅を建てるための予算にかなっている、希望のエリアの宅地である等、さまざまな理由があって「ここだ!」と選んだ土地が、たまたま細長い土地だった。それだけの理由で家づくりを諦めてしまうのはもったいないです。そこに「自分の家を建てたい」という、そのご希望を大切に、まずは豊栄建設にご相談ください。
兼平:設計が間取りを作る時は、ご要望がはっきりしている方が提案をしやすいです。これから建てる家に、こんなことを取り入れたいという項目が箇条書きでもはっきりしていて、それぞれの優先順位や妥協点も明確だと、スムーズに間取りが決まっていくと思います。変形地の場合、選択肢が限られてしまうことがありますが、逆に今回のようにピタっとはまった時は、“ここって変形地だった?”というくらい納得がいく間取りになると思います。まずはお気軽にご相談ください。